火災保険では、火災だけでなく自然災害による建物・家財への被害、更には盗難や偶発的な事故などを補償してくれますが、補償範囲は特約によって異なります。火災や災害が発生したときに受け取れる保険金の金額や、保険料はいくらになるのか。火災保険で補償を受けられる範囲や保険金額の設定方法について解説します。
・火災保険の補償対象と範囲
・火災保険で補償されるリスク
・保険金額の設定方法
火災保険の補償範囲
火災保険は、自然災害などで建物や家財への損害を補償する保険です。火災による損害だけではなく風災や雪災、雹災などによる自然災害による損害や、不測かつ突発的な事故などで生じた損害など、範囲は幅広く設定されています。
火災保険で補償対象とされる「建物」と「家財」
火災保険の補償の対象は、主に3つのパターンがあります。
- 建物のみ
- 家財のみ
- 建物・家財の両方
「建物」
「建物」とは、建物本体だけではなく、建物に備え付けの冷暖房や浴槽、流し台なども含まれます。また、建物に付属している門や塀なども含まれます。(門や塀などは特約が必要なケースもあります)
「家財」
「家財」とは、契約者または親族が所有している、建物に収容されているものを指します。
家財の対象は、建物に収容されている動産(動かすことのできる財産)です。たとえば、タンスや椅子、家電や衣服などが当てはまります。さらに、敷地内にある物置や車庫の中にあるものも対象です。
保険金額は「再調達価額(評価額)」で設定
建物の保険金額は「再調達価額(評価額)」をもとに決めるのが一般的です。再調達価額とは建物の状態や築年数にかかわらず一定額で、建物の修理や再建築に必要な金額が設定されます。すなわち、保険金額は評価額と同じ金額になります。
複数の火災保険に加入し、評価額以上の保険を掛けた場合も、受け取れる保険金の合計額は建物の評価額の範囲内になります。
建物の保険金額
新築住宅と中古住宅では建物の評価額の算出方法や建物の評価額が違います。それぞれの目安を紹介します。万一の火災や災害で建物に被害を受けたときに備えて、火災保険に加入する際は必要かつ十分な補償額を設定しておくことが大切です。
評価額の算出方法
建物の保険金額をいくらにすればよいのかを知るには、まず建物の価値を評価する必要があり、その評価基準は「新価(しんか)」と「時価(じか)」の2つあります。
評価基準 | |
---|---|
新価 | 新品に建て直すための価額(再調達価額) |
時価 | 時価 = 新価 - 時間経過による消耗分 |
火災保険では、建て替えに必要な価額をすべて賄える「新価」で評価した金額で保険金額を設定することをおすすめします。
新築住宅の評価額
新築の住宅では、建物の価額がそのまま評価額となるため、評価額を求めるためには、建築にかかった総費用から土地代や設計費・測量費・税金などの諸費用を差し引いて計算します。
建物の購入価額 = 評価額
また、建売住宅を購入した時に土地と建物の価格が明確化されていない場合は、売買契約書に記載された消費税額をもとに建物の評価額を計算できます。土地の売買には消費税がかからないからです。具体的には、次の計算式を使って計算します。
建物の購入価額 = 消費税額 ÷ 0.1
中古住宅の評価額
中古の住宅では、新築当時の建物の価額に物価変動率を掛けた額を評価額とします(年次別指数法)。物価変動率は建物の構造や建築された年によって定められる倍率で、保険会社によっても異なります。
新築当時の建物の価格 × 経過年数に応じた物価変動率
建築年数や新築当時の建築費がわからない場合は、建物の延床面積と平均的な築単価を掛けた額を評価額とします(新築費単価法)。平均的な築単価は、建物の構造と建物の所在地である都道府県の物価などを考慮して決定されます。また、保険契約者の要望によって、評価額を70%~130%の範囲で増減可能です。
保険会社が定める1平方メートルあたりの単価 × 延床面積
家財の保険金額
まずは何が家財保険の補償の対象になるのかを紹介します。
補償の対象になる家財
建物の中にある被保険者または被保険者と生計をーにする親族が所有する家財です。家具や家電だけでなく、日常用品や衣服なども含まれます。大前提として「建物」の中にあることが条件となります。
補償対象となるもの
- 電化製品、家具、衣類、食器などの生活用動産
- 1個(1組)の価額が30万円を超える貴金属、宝石、書画、骨董等
補償対象外
- 建物に付属しているもの
- 自動車
- 動植物
- 現金・小切手・有価証券
(生活用の通貨、預貯金証書などは盗難に限って補償される場合あり) - パソコンなどの中のプログラムやデータ
- 仕事で扱う什器や商品
- 家財を建物の外に持ち出している間に発生した損害
家財の補償金額の目安
家財の補償金額は保険会社の定める範囲内であれば、保険契約者で自由に設定できます。保険金額を高くするほど保険料は高くなりますが、保険料を抑えようとすると、買い直しの費用が足りなくなる可能性もあります。一般には、持っている家財を全て買い直すのに必要な金額で保険金額を設定するのがおすすめされています。
※独身世帯の場合家族構成での簡易評価額の表
世帯主の年齢 | 2名 大人のみ | 3名 大人2名 子供1名 | 4名 大人2名 子供2名 | 5名 大人2名 子供3名 | 独身世帯 |
---|---|---|---|---|---|
25歳前後 | 490万円 | 580万円 | 670万円 | 760万円 | |
30歳前後 | 700万円 | 790万円 | 880万円 | 970万円 | 一律 |
35歳前後 | 920万円 | 1000万円 | 1090万円 | 1180万円 | 300万円 |
40歳前後 | 1130万円 | 1220万円 | 1310万円 | 1390万円 | |
45歳前後 | 1340万円 | 1430万円 | 1520万円 | 1610万円 | |
50歳前後(含以上) | 1550万円 | 1640万円 | 1730万円 | 1820万円 |
臨時の出費に使える費用保険金
火災などの災害が発生した場合、建物・家財の損害以外にも近所への見舞金や仮住まいの費用などさまざまな費用が発生します。そのような諸費用をサポートしてくれる費用保険金の内容。
・臨時費用保険金
・残存物取片づけ費用保険金
・失火見舞費用保険金
・地震火災費用保険金
・水道管修理費用保険金
・損害防止費用保険金
臨時費用保険金
損害保険金が支払われる際に、損害保険金とは別に支払われる保険金で、一時的な居住空間の確保など、臨時的な出費に充てる保険金です。特に使い道は指定されていません。
支払われる保険金は保険会社や契約内容などによって異なりますが、1回の事故あたり、損害保険金の110%~30%(限度額100万~300万円)であることが多いようです。
残存物取片づけ費用保険金
火災や自然災害などで損害を受けた建物や家財の焼け残りや瓦礫などの残存物を片付けるための費用として支払われます。
損害保険金の10%を限度額として、建物の取り壊し費用、清掃費用、搬出費用などの実費が支払われます。ただし、水災による損害については対象外としている保険会社もあるようです。
失火見舞費用保険金
保険の対象となる建物から発生した火災や爆発、破裂などの事故により、近隣など第三者の所有物に損害を与えた場合に支払われる保険金です。
重大な過失以外の失火による類焼損害は、法律により賠償しなくてもよいことになっていますが、損害を受けた隣家が火災保険に入っておらず、十分な保険金を受け取ることができない場合があります。法律上の賠償責任はなくても、ご近所へのせめてもの心遣いができる保険金です。
保険金の限度額は、1事故1被災世帯あたり30万円前後、損害保険金の30%までのを限度としている保険会社が多いようです。
地震火災費用保険金
地震・噴火またはこれらによる津波を原因とする火災で建物が半焼以上、または保険の対象の家財が全焼した場合に保険金額の5%が支払われます。(1事故1敷地内ごとに300万円が限度額)
半焼以上とは、建物の主要構造部の火災による損害が、建物保険金額の20%以上である場合か、焼失した部分の床面積が、建物全体の延べ床面積の20%以上となった場合を指します。
水道管修理費用保険金
建物専用の水道管が凍結によって損壊を受け、これを修理するときの費用が実費で支払われます。1事故あたり10万円など限度額が設けられています。
寒さが厳しい北国や、冬には雪が降る山間部などの家には起こりやすいので、水道管修理費用保険金に加入しておくと安心です。
損害防止費用保険金
損害防止費用保険金とは、火災・落雷・破裂・爆発などの事故において、損害の拡大を防止するために負担した費用に対して支払われる保険金です。
消火活動のために用いた消火薬剤(消火器)などの再取得費用や、消火活動に使用したために損壊した物の修理費用、消火活動のために緊急招集された人員や器材に関わる費用などです。
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火災保険では火災で発生した建物・家財への損害だけでなく、風水害や雪などの自然災害や衝突や突発的な事故などのリスクへの幅広い補償があります。
建物の修繕・再建築や家財の再購入には多額の費用がかかりますので、必要な補償を受けられるように火災保険を契約してください。
また、火災保険を契約していても、実際に建物や家財への損害が発生した場合に保険金が受け取れるかわからないという方もいらっしゃると思います。お困りの際には一度ご相談ください。
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